【No.288】通貨が下がると…輸出は有利に…輸入はインフレに拍車…

通貨安のニュースが相次いでいる。10月の外国為替市場では円相場が一時、ドルに対して32年ぶりとなる150円台まで下落した。9月には英国の通貨ボンドが急落し、対ドルで過去最安値を更新する場面があった。では通貨の下落は何故起こるのか。為替相場は様々の要因で変動する。基本的には需要が大きい通貨が買われ、高くなる。では円安ドル高が進む要因とは。

  1. 金利
    日米の金利差の拡大。米国は資源価格の上昇などでインフレが進んでおり、急ピッチのインフレは国民の生活を圧迫する。そこでFRBは政策金利を上げて、お金を借りて使うより預けることを促し、消費に歯止めをかけようとした。FRBは今年異例のペースで政策金利を引き上げた。日本は日銀が政策金利をマイナスにしたままで、長期金利にも上限を設ける政策を維持しており、投資家は円を売ってドルを買う動きを強め円は安くなった。10月21日円は1990年以来32年ぶりの円安1㌦151円台を付けた。一方11月2日FRBの利上げ縮小の観測では円を買い戻す動きが勢いづき円相場は10~11日で7円上昇し、1㌦138円台後半で取引を終えて24年ぶりの上昇幅となった。
  2. 経済政策
    財政が悪化する懸念。英国のトラス政権はインフレで生活が苦しい世帯を救済するため大規模な減税などを含む政策を打ち出した。しかし減税は消費を後押しし、物価上昇の要因となった。インフレではモノの値段が上がり、お金の価値は下がり通貨安になった。通貨安になれば輸入品の価格が上がり、さらにインフレが進むという悪循環に陥る。インフレ対策で金融引締めをしているイングランド銀行の金融政策との矛盾も不信感に繋がった。トラス政権は減税分の財源のために、国債の発行を増やす方針だったが、国債の増発で財政が悪化する懸念から英国債価格も急落し、英国から投資資金を引き揚る動きが強まり株安になった。日本は英国に比べ、国債の買い手に占める外国投資家の割合が低い点が異なり、基本的に国内の投資家などで国債が消化でき、日銀も国債を大量に買い入れている。そのため英国のように国債の価格急落が起きにくいと言われている。ただ日本の金融政策の持続性には疑問を呈する専門家は多く、物価対策で財政出動すると逆効果になる英国の失敗、日本でも通貨の信任が問われる局面では教訓になると思われる。
  3. 対外収支
    貿易収支を含む経常収支。輸入が増えて、外貨投資も増えると、日本経済のファウンダメンタルは脆弱さから円安を促進する。かつて世界一の貿易黒字を誇った日本は今では貿易赤字国に転落し、22年上半期(4月~9月期)の貿易赤字は約11兆円と比較可能な79年以降で最大を記録した。
  4. 景気動向
    経済指標などの悪化。長期にわたる日本の低成長ぶりだ。最近のIMF(国債通貨基金)の世界経済見通しによると日本のGDP(国内総生産)成長率は昨年(21年)、今年(22年)共に1.7%と2%以下の見込み。今年は米国・中国・ユーロ圏も低成長を余儀なくされたが、こうした国・地域は昨年、5%以上の成長率を記録している。低成長の国である日本の通貨(円)の需要が低いのは自然であり、円安の進展は「日本経済の低迷を反映したもの」との見方が国内でももっともらしくきかれる。
  5. 政治情勢
    政権の混乱や紛争など。一国の政権の信頼性が揺らげば通貨安は避けられない。今ドル高が激しい通貨選別を生んでいる。それはインフレの実勢に即した政策の手段が整わない国の通貨だ。当局間で政策に整合性がなく混迷を深める英国、利上げ継続へ経済の耐久力に不安が残る韓国などだが、インフレ対応が必要ない日本でも、円安を巡る政府と日銀の政策のズレを突かれ一時円安を招いた。

日銀は景気下支えのため金融緩和を貫き円安に進みやすくしている。円安は輸入インフレに拍車をかけ、所得の海外流出を通じて景気を下押しする。景気のための緩和が円安を通じて景気を下押しする。景気のための日銀緩和が円安で景気を冷やす構図だ。政府の物価高対策と為替政策は、日銀緩和が一因である円安への対応に振り回さている。金融緩和の効果を確保しつつ金利変動を柔軟にするという、政策面で難しい工夫が求められている。

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