【No.279】金融市場の低金利、金余りの終焉…株価・リスク資産は…

2022年世界の金融市場でパラダイムシフト(時代・分野で当然だった認識や思想・価値感が劇的に変化する)が起こる可能性が高まった。コロナ禍、欧米などの中央銀行は感染拡大による景気低迷を防ぐため「超低金利」と「流動性供給」を強化した。その結果世界経済で卸売物価上昇が鮮明となった。米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げと流動性の縮小に舵を切った。今後米国を中心にEUも金融正常化にシフトする。その結果金利が上昇、世界金融市場は不安定化する恐れがある。今後の変化は3月以降にFRBが利上げを実施し、6月か7月にバランスシートの縮小が始まる可能性が高い。それによってIT先端企業の株式・債券や不動産などの価格は下落する可能性がある。FRB以外にも、英国、韓国などが利上げを急ぐと見られる。金融市場ではパラダイムシフトによる株価下落を、警戒し始めた投資家はいるがその数は少ない。仮に米国で4回の利上げとバランスシートの縮小があるとすれば世界的に株式相場の下落が現実味を帯びるだろう。

物価の推移を示す経済指標として、卸売物価指数(生産者物価指数=CPI、日本では企業物価指数)と消費者物価指数(CPI)の二つがある。世界経済全体で卸売物価の上昇は鮮明だ。昨年11月のCPIの上昇率は、米国9.6%、中国12.9%、日本9.0%、ユーロ圏23.7%だった。日本の上昇率は41年ぶり高さだ。コロナ禍の影響で各国の工場生産や物流が停滞し、サプライチェーンの寸断が深刻化し、世界全体で労働不足が厳しさを増している。

脱炭素や地政学リスクの高まりを背景にエネルギー資源の需給も逼迫した。さらに異常気象による穀物の生育不順など複合的な要因が一気に顕在化して物価を押し上げている。当面の間は供給制約が深刻化し、世界的に卸売物価は上昇基調で推移するだろう。日本の21年11月のCPIの上昇率は前年同月比0.6%だった。1年前と比べて消費者の物価に対する実感は60.8%の人が上がってきたと認識し、昨年春の携帯電話の電話料の引き下げ影響がなくなる4月に、CPIは約1.5ポイント押し上げられて、国内外でインフレ圧力の高まりが鮮明になる。

物価上昇圧力の高まりで、21年11月FRPのパウエル議長は「物価上昇が一時的」としていた認識は「誤り」だったと認めた。12月FOMC(米連邦公開市場委員会)は22年に3回の利上げを示唆した。FRBは利上げ後、流動性供給のために購入した米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の売却を急ぐ考えを示した。金融緩和から金融正常化へ、それは「超低金利・流動性供給」から「利上げ・流動性吸収」へ、世界の金融市場が緊張感を高めている。これまでの金融引締めの局面と、取り巻く環境がすっかり変わっているからだ。

3月からスタートした年4回程度の利上げを市場は織り込んでいるが、利上げのスピードが十分であるかは定かでない。特に失業率が3%台まで低下する一方、実質賃金上昇率はマイナスの労働市場で、賃金上昇が加速するリスクは少なくない。2020年世界の金融市場が大混乱に陥った際に、各国中央銀行の量的緩和が大きな効果を発揮したが、景気回復の加速が鮮明になった昨春以降早めに手じまいすべきだったが、量的緩和の持続は資産価格を押し上げてしまった。インフレ高進こそが最大の支持率低下要因とする、バイデン政権下インフレを抑制するために、FRBは早期に利上げと流動性吸収を進めざるを得なくなった。

世界の金融市場では「超低金利とカネ余りの状況が続く」との過度な楽観論で、積極的にリスクをとる投資家が増えた。特に個人投資家がマネーゲーム感覚で株を買う動きが鮮明になった。米テスラの株価上昇もそうだが、SNSで人気のある米ゲームストップは1月11日の株価の終値が130.30ドルで20年末の7倍の水準だ。それ以外にも成長期待の高い米GAFAMなどIT先端銘柄の株価はかなり割高な水準だ。株式以外にも信用格付けがBB格以下のジャンク債や不動産、仮想通貨など投機的に高い水準の資産が多い。世界的な物価上昇圧力の高まりはERBが利上げと流動性吸収を急ぐ姿勢を鮮明にすれば世界の国債流通利回りは上昇し、株などの価格変動資産を手放す投資家は増える。その結果世界的に株などのリスク資産は下落する。特にIT銘柄を中心に株価が下落する。世界の金融市場全体がリスクオフを加速すれば、中国など新興国の債務問題が深刻化し、新興国の金融市場から資金が流出する。今後、世界経済の先行き懸念が一層高まる展開となる。

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