【No.282】円安がいつまでか…米経済減速で、株式は調整か低迷か
株価のシナリオは神谷尚志(エコノミスト 4/23参照)

加速する円安・ドル高、ここ2か月ほどで急速に円安が進んだ。その最大の理由は内外金利差の拡大にある。米国はコロナ危機以来のゼロ金利政策に終止符を打ち、今後も利上げを急ぐ姿勢を鮮明にしている。一方日銀は「円安は日本経済にプラス」として大規模緩和を続け、長期金利の上昇さえ抑え込んでいるから、円安進行は市場の当然の反応だ。そのほかの円安要因は、日本企業の海外シフトによる国際収支構造の変化だ。かつて巨額の黒字を誇った貿易収支も近年はゼロ近辺であり、代わって経常黒字を支えているのは、第一次所得収支、特に投資収益収支だ。しかも投資収益の主体は、今や証券投資ではなく、直接投資による海外現地法人が稼ぐ収益だ。この収益は計算上投資収益にカウントされるが、実態はほとんどが海外法人の内部留保であり、日本に送金されるとはない。つまり経常収支は黒字でも、為替需給上円高になりにくい構造に変化している。またストックの面でも、日本はいまだ世界一の対外純資産国だが、その内訳は直接投資の比重が増えている。以前は金融危機があれば、日本の海外資産が還流するとの思惑から円が買われた。いわゆるリスクオフの円高だが、直接投資は簡単に還流できないので、リスクオフの円高も生じにくい。ウクライナ危機の現在、原材料価格の高騰で貿易収支は赤字が拡大している。一方リスクオフの円高は起こらず、もう一つの円安要因となっている。また23年4月任期満了を迎える黒田総裁の在任中は日本の金利は現状から大きく上昇することは考えにくい。この先ドル円相場は上下動を繰り返しながらもトレンドは円安が続くと考えられる。

円高への転換の可能性は、円安で大幅な輸出増加が起きた場合だが、製造業の生産拠点の海外移転が相当進んでおりもはや期待できない。もう一つは原油価格の急騰で世界的に原油需要が減少し、米国や中東で原油の大幅増産が行われた場合だ。原油価格が1バーレル80ドルまで下落すれば、多少円高に戻る余地があるかもしれない。

株価のシナリオは基本的に企業業績の実態を反映したものになる。長期の金融緩和局面が終わった時点で、業績が芳しくない企業の株価上昇は実績に応じて下方修正される。今の日本企業の主な業績拡大の要因は

  1. 円安。日本の海外子会社の利益の円転換が膨らむため、輸出企業の企業収益改善につながる。
  2. 米国経済がしばらく堅調に推移する。現地の雇用情勢は力強く、多少の利上げでも経済成長の腰折れは薄いと考えられる。
  3. ウクライナ紛争の終了後は復興需要が見込まれこと。
  4. EUはウクライナ連帯基金を提案し各国から資金を集め復興活動に充てる。また各国が国防費を増額しているという事情もある。

一方企業業積の縮小要因は

  1. 原油高が挙げられる。輸入金額が大幅に増えると、名目GDPが一気に押し下げられてしまう。家計面でみれば光熱費などの使用量は変わらなくても利用金額は増加し、購買力低下に跳ね返る。
  2. 米国では既に2年物国債や5年債金利が急上昇している。金利上昇の米国経済への影響は今年の秋から現れ急減速に向かう可能性がある。

今後、投資環境全般に付いて抑えておきたい六つのポイントは、

  1. インフレの動向
  2. 原油をはじめとした資源高の動向
  3. 金利が従来の異常な低水準から上昇に転じたか
  4. 米国経済が依然堅調であるかどうか
  5. ウクライナ危機収束後の復興需要の見込みはどうか
  6. 米国の株式時価総額の名目GDP比の水準が異常に高い果たして転換はあるか。

以上から今後の市場動向をみると金利が上昇トレンドにあり、債券相場は当面低迷する可能性が高い。ドル円相場は円安基調が続き、米国経済は秋ごろから金利上昇の影響で、成長が急減速する恐れがある。それに伴い、企業収益が伸びず(あるいは減益となり)大幅な株価調整に至るシナリオが考えられる。米国の株式時価総額の名目CDP比(バフェット指数)は歴史的にも異常な水準にあり、調整が本格化すれば何十年に一度の株価下落が起こり、株式相場は長期低迷に至る可能性がある。米国の経済や株価がそうした状態になれば、日本株も大きな打撃は免れない。市場動向は予期せぬことが起こり、毎度のように予想したことがひっくり返される。コロナ禍がなければFRBもゼロ金利政策をとることがなかったし、その後の株の大相場もなかっただろう。以前は見通しを誤ってもそのまま株を持ち続ければ回復出来たが、本格的な株価調整が到来すればその打撃にもよるが、回復に要する時間は数年もしくはそれ以上かかることも考慮すべきか。

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