【No.287】円安でインバウドが期待されるが、でも買われない日本企業… FTビジネスエディター レオ・ルイス

日本人は自分たちの円の価値が下落したことを嘆きつつも、世界で最もきれいで、おいしい食べ物がある日本の消費社会の物価は、外国人から見たらどれほど安く感じられるだろうかと考える。とにかく24年いや32年ぶりの安値では、ただただすべてが安く感じられる。ただ割安が続く日本の株式市場だけは外国人の人気を集めそうにない。

日本はこの2年半、海外からの観光客をほとんど受け入れてこなかった。政府は10月11日から水際対策を緩和し、長らく差し止めていた一部の国・地域から観光や出張目的で来日する外国人のビザを免除する措置を再開し、入国者数の上限も撤廃した。日本が期待するのは円安効果で爆買いしてくれる外国人訪問者を呼び戻すことだ。年間4000万人に上る訪日客に対応できるおもてなしの態勢を整えていたが、新型コロナの感染拡大で実現することはなかった。今回の緩和で外国人観光客は2019年に訪日した時よりも30%ほど購買力が高くなったドルの恩恵を存分に受けることができるようになった。

就任から1年を迎えても日本の成長戦略を投資家に納得させられずにいる岸田首相は、円安に伴うインバウンドが持つ可能性に飛びついた。岸田氏は3日の所信表明で「円安のメリットを最大限引き出す」と述べ、訪日外国人による「年間旅行消費額5兆円超」の達成を目指すとした。この目標は19年の総入国者数の3割を占める中国人が、自由に旅行ができるようにならない限り達成は困難だろう。それでも欧米や台湾・東アジアからの旅行客が、落とすお金はすさまじい額になる。その規模は一部のアナリストの間では、日銀が9月22日に緊急介入した200億ドル規模を上る円買い・ドル売りよりも、円安を是正する効果か大きいといわれている。

外国人観光客だけでなく欧米から多くのファンドマネージャーなどの投資家も久々に日本に出張してくるが、彼らの投資ポートフォリオに日本株の比率が高くなる可能性は引き続き低い。それは何故だろうか。

日本企業への投資が増えない理由は4つあると考えられる。

  1. 日本は天然資源に恵まれず、高齢化問題を抱え、エネルギー政策は福島第一原発事故以来この10年、ほぼ何の進展もなく、こうした問題が日本経済をむしばみ続けている。安倍元首相は「日本は変わりつつある」と国内外にアピールすることに成功したが、岸田氏はそうしたメッセージも発信で来ていない。
  2. 日本市場には利益率が高く多様な企業が存在するが、国内の投資家は触手を伸ばさない。日本には物言う株主によるアクティブな波が相次いで押し寄せ、小さな動きではあったが旧弊な企業価値を守ろうとする日本企業のかたくなな姿勢を、解きほぐすことができることが示されたが、国内の年金基金や保険会社等の大手機関投資家がその動きに続かず、日本企業の根本的変革に至らなかった。
  3. 東芝を巡る状況では、東芝は再編計画の公募では数10億ドル規模の買収成立を求めてプライベートエクイティ(PE)が主導するコンソーシアムなど4陣営が競合するが、海外ファンドに比べて規模の小さい官民ファンド産業革新投資機構(JIC)などが名乗りをあげているのみだ。大きなビジョンを掲げてリスクを取ろうとする日本ファンドが出てこないこと自体も、衝撃的といえる。
  4. 今後さらに3年待っても、日本が大きく変わると期待できる要素が全く見当たらない。世界的な景気の後退が起きつつあるなか日本企業は多くが抱える債務の規模が比較的小さく、多額の内部留保を積み上げてきたことから、他の国や地域ほど打撃を受けそうにない。本来、投資家には魅力的に映るはずだが、企業としての野心より存続を優先するやり方を貫いてきた。海外の投資家はそんな企業を求めてはいない。景気後退の嵐のなかでも失敗を恐れず果敢に挑戦する日本企業の姿は既に想像できない。嵐が去ってもリスクを取ろうとせず塹壕の中で縮こまり続ける姿を想像できるだけに日本企業を今買い時と考える海外投資家はいなさそうだ。今チャレンジが期待される日本企業なのだが。

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